~ある相続相談が教えてくれた時代の変化~

「父が亡くなったので、相続の相談をしたいのですが…」

不動産の相談窓口に寄せられる、いつもと変わらない一言。
しかしその裏側では、2024年を境に“相続手続きのルール”が大きく動き出しています。

なかでも最大のトピックが、
相続登記の義務化。

さらに、戸籍の取得方法や相続人を確定するプロセスも、
近年の法改正で大幅に便利になり、同時に注意点も増えています。

この記事では、相続実務の現場で本当に重要なポイントを、
ストーリー形式でわかりやすくまとめていきます。

■相続は「誰が相続人か」を確定する旅から始まる

相続の第一歩は、“相続人の確定”。
しかし多くの方が誤解しているのが、

「現在の戸籍があれば全部わかるでしょ?」

という思い込みです。

実際には、
被相続人の出生から死亡まで、すべての戸籍を集める必要があります。

なぜか?

理由は非常にシンプルですが深刻です。

●戸籍の改製で情報が消える

戸籍は歴史のなかで何度も様式が改製されています。
そのたびに古い戸籍にしか載っていない情報が存在します。

結婚して除籍された人は、新戸籍に移記されない

養子縁組・認知などの重要事項が新戸籍に引き継がれないことがある

つまり、過去の戸籍を遡らなければ**“隠れ相続人”を見落とすリスク**があるのです。

戸籍の収集は、まるで家族の歴史を逆再生していくような作業。
ここを正確に行うかどうかで、相続の成否は大きく変わります。

■2024年「戸籍の広域交付」スタートで相続実務が激変

2024年3月、戸籍法の改正により、
全国どこの役所でも戸籍を取得できる広域交付制度が始まりました。

これは相続実務における革命とも言える制度です。

●広域交付のメリット

本籍がバラバラでも、1ヵ所の窓口で一括取得できる

郵送手続きが不要

出生から死亡までまとめて集められるため圧倒的に早い

戸籍収集に数週間〜数ヶ月かかることも珍しくなかった従来に比べると、
相続人の確定作業が格段に効率化されました。

●ただし、注意点もある

取得できるのは本人、配偶者、直系血族のみ

兄弟姉妹の戸籍は広域交付では取れない

代理申請は不可(必ず本人が窓口へ)

対象外の古い戸籍も存在する

便利になった一方で、制度の限界も理解しておく必要があります。

■2024年4月、相続登記義務化で「放置」が許されなくなった

相続登記の義務化は、相続の実務を根本から変えました。

●義務化の内容

相続を知った日から 3年以内に登記が必須

過去の相続も対象で、2027年3月31日が最終期限

正当理由なく登記しないと、10万円以下の過料の可能性

これまで「相続登記はいつかやればいい」という空気がありましたが、
2024年以降は完全に通用しません。

●なぜ国がここまで厳しくしたのか

原因は、所有者不明土地問題。
日本全国で所有者不明の土地が急増し、その総面積はなんと九州を超える規模。

公共工事が進まない

山林・土地が荒れ放題

地域の治安や景観悪化

これらを食い止めるため、相続登記の義務化が導入されたのです。

■登記を急がなくても大丈夫?「相続人申告登記」という救済策

「相続人どうしで話し合いがまとまらない…」
「遺産分割協議が長引いている…」

そんなケースでも安心できる制度が新しくできました。

●相続人申告登記とは

相続人であることだけを法務局に申告する制度。
これをしておくだけで、相続登記の義務を果たした扱いになります。

遺産分割が決まらなくてもOK

後日まとまったら、改めて登記すればよい

「争いがあるから動けない」を理由にすると義務違反になってしまう時代。
この制度が、相続の“セーフティネット”となります。

■相続登記には3種類ある——間違えると後戻りできない

一口に相続登記と言っても、実務では主に次の3種類に分かれます。

①遺産分割による相続登記

→ 最も一般的。相続人全員の合意が必要。

②遺言による登記

→ 公正証書遺言なら検認不要でスムーズ。
→ 「◯◯に相続させる」といった特定財産承継遺言が増加中。

③法定相続分による相続登記

→ 書類が少なく、相続人1人で申請できる。
→ ただし、後で遺言が出てきたときに調整が必要。

この③については、大きな注意点があります。

●“法定相続分で登記したあと”の救済が2023年に誕生

以前は、一度法定相続分で登記してしまうと
「遺言通りの所有者に書き換える」作業が非常に困難でした。

ところが2023年の民法改正で、

相続人が単独で所有権更正登記をできるようになりました。

これは実務上、非常に大きい変化。
「とりあえず法定相続分で登記しておく」という選択肢が現実的になったのです。

■2026年からは“不動産の一覧化”が可能に

——所有不動産記録証明制度のスタート

相続で想像以上に大変なのが、
被相続人名義の不動産調査です。

固定資産税の通知書だけでは不十分で、
「実は別の土地を持っていた」というケースも珍しくありません。

これを根本的に解決するのが、
**2026年に始まる「所有不動産記録証明制度」**です。

●できるようになること

被相続人が所有する全国の不動産をリスト化

法務局が“公式に”証明書を発行

相続手続きに必要な不動産の漏れをほぼゼロにできる

これにより、相続で最も多いミスのひとつが解消されます。

■まとめ:相続は「法改正を知っている人」が勝つ時代へ

相続の世界は、ここ数年の法改正で大きく変わりました。

●特に押さえておくべきポイント

戸籍は出生からすべて必要

広域交付で戸籍収集が劇的に楽になった

相続登記は義務化され、期限を過ぎると過料の可能性

相続人申告登記で最低限の義務はクリアできる

遺言の確認は最優先

法定相続分での登記も後から修正できる時代に

2026年には不動産の一覧証明制度がスタートする

■最後に:正しく動いた人から順番に得をする

相続は「いつかやればいい」「落ち着いてから考える」
そんな時代は終わりました。

登記の義務化、戸籍制度の変化、相続人確認の厳格化…。
正しい知識を持って動いた人から順番に、リスクを減らし、資産を守れる時代です。

相続が発生したら、まずは
“情報の整理”と“早めの相談”。

これだけでも、相続のトラブルを大幅に回避できます。

みんなの相続相談所グルーヴでは司法書士や税理士と連携して、お客様一人ひとりに合わせて適切な方法をオーダーメイドでアドバイスしております。まずは無料相談から、お気軽にご連絡ください。