こんにちは。今年も早いもので、もう5月が終わろうとしております。
先日(大分時間が経ってしまいました、、)多くの方の資産承継に重大な影響を与える最新の税制改正大綱が発表されました。今回スポットを当てるのは、「貸付用不動産の評価の見直し」です 。これまで相続税の負担軽減策として広く活用されてきた「タワーマンション節税」や「不動産小口化商品」のスキームに対し、極めて厳格なメスが入ることになりました 。
なぜ今、見直しが行われるのか?(改正の背景)
不動産を相続・贈与する際、これまでは取得時期に関わらず「財産評価基本通達(路線価や倍率方式)」に基づいて一律に評価されていました 。しかし、特に都市部の賃貸マンションや不動産小口化商品は、「実際の市場価格(時価)」と「相続税評価額」との間に大きな乖離(かいり)が生じていました 。
国税庁の専門家会合で示された実際の事案(下記イメージ)を見ても、その差は一目瞭然です 。
実際の乖離リスクの事例
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一棟貸付マンションのケース: 被相続人が死亡の約2年8ヶ月前に21億円で購入した物件が、通達評価額ではわずか4.2億円(約5分の1)に 。借入金22億円と相殺(債務控除)することで、相続税額を12.3億円から4.4億円へと、約7.9億円も減少させて申告していました 。
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不動産小口化商品のケース: 贈与の約5ヶ月前に3,000万円で購入した商品が、通達評価額では480万円(約6分の1)に 。贈与税額を1,195万円から49万円へと、約1,146万円も軽減し、贈与後にすぐ現金化するスキームが横行していました 。
★最高裁判決(総則6項)の存在 過去には、このような画一的な評価による著しい税負担の軽減が「租税負担の公平に反する」として、国税庁長官の伝家の宝刀(総則6項)により鑑定評価額(時価)での再評価を命じられた事案(平成27年12月10日最高裁判決・いわゆるタワマン節税事件)もありました 。今回の改正は、こうした個別の追徴課税ではなく、制度そのものを厳格化して租税回避に対応するものと言えます 。
改正案の具体的な中身(本則と経過措置)
今回の見直しにより、令和9年(2027年)1月1日以後の相続・贈与等から、評価方法が以下のようにガラリと変わります 。
① 一般の貸付用不動産
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課税時期(相続・贈与)前5年以内に取得・新築した場合: 従来の路線価等ではなく、「通常の取引価額(時価)」で評価します 。ただし、課税上の弊害がない限りは、取得価額をベースに地価変動等を考慮して計算した価額の100分の80(80%)に相当する金額で評価することが可能です 。
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取得・新築から5年超が経過している場合: 従来通り、路線価等による評価が維持されます 。
② 不動産小口化商品(任意組合型・信託型など)
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取得時期に関わらず(5年以内か5年超かを問わず): 一律で「通常の取引価額に相当する金額」での評価となります 。具体的には、事業者側が把握している適正な処分・買取価格や売買実例価額、定期報告書に記載された価格などを参酌して評価します 。 (※これらに該当する価格がない場合に限り、上記①と同様に「5年以内は取得価額×80%ベース、5年超は路線価等」の基準に準じます 。)
【重要】新築家屋に関する経過措置
上記①の「5年以内一律時価評価」には経過措置が設けられています 。通達が発遣(施行)される日までに、被相続人等が5年以上所有している土地に新築した家屋(建築中のものを含む)については、この5年以内時価適用の対象外(従来通りの評価)となります 。
業界・市場へのインパクトと今後の展望
この激変とも言える大綱発表を受け、不動産を活用した資産運用・財産承継ビジネスを行う企業からは、早くも今後の対応や事業計画への影響に関するIRリリースが出されています 。
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株式会社FPG(2025年12月19日公表): 「実現した場合には税務面におけるメリットが大幅に減少または消失する可能性がある」としつつも、顧客へ丁寧な説明を行いながら販売は継続する方針を示しています 。
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株式会社青山財産ネットワークス(2025年12月22日公表): 中期経営計画において不動産小口化商品の組成額を毎年10%増と見込んでいたものの、今回の改正による需要変化を鑑み、当初計画を下回る見込みであるとして計画の精査に入っています 。一方で、財産コンサルティング全体のニーズは拡大しており、累進配当方針に変更はないとしています 。
各社の発表からも分かる通り、今後は「相続税を引き下げるためだけに直前に駆け込みで不動産を買う」という安易な対策は完全に通用しなくなります 。
詳細な計算方法や「一定の貸付不動産」の具体的な範囲、借地権・借家権の考慮の有無などについては、令和8年(2026年)秋頃に公表される予定の具体的な通達を待って精査していく必要があります 。
まとめ:これからの財産承継対策
今回の改正は、単なる増税ではなく、国が掲げる「公平性の確保と租税回避への厳格対応」の基本思想に基づいた構造転換の一環です 。
今後は、直前の極端な圧縮スキームに頼るのではなく、早い段階からの計画的な生前贈与や、事業・資産の健全な運用をベースとした「王道の資産承継プラン」へとシフトしていくことが求められます。
「自分の持っている賃貸物件や小口化商品は大丈夫だろうか?」と少しでも不安に思われた方は、信頼できるパートナーへ早めにご相談されることをお勧めいたします。
ご相談はお気軽に「グルーヴ」まで。
