相続は家族の大切な出来事ですが、海外との関わりがあると一気に複雑さを増します。今回は国際相続のリアルなケースを通して、その落とし穴と備え方を見ていきましょう。


1. 海外在住の子どもがいるケース

東京で暮らしていた父が亡くなりました。
相続人は二人──日本に住む長男と、20年以上前にアメリカに渡った次男です。

遺産には東京の自宅のほか、父が長年運用していた米国の銀行預金も含まれていました。
「兄弟で半分ずつ」──単純に思えた相続は、実は大きな落とし穴を抱えていました。


2. 国際相続の壁

相続税の課税範囲の違い

  • 日本は「全世界課税」を基本にしており、日本国籍を持つ相続人が海外に住んでいても、日本国内財産だけでなく海外財産にも課税されるケースがあります。

  • 一方、米国は「被相続人のステータス」で課税範囲を決め、非居住外国人には米国内財産のみ課税されます。

国外転出時課税という罠

もし相続財産に1億円以上の有価証券が含まれていた場合、相続人が非居住者なら「国外転出時課税」として被相続人に譲渡税が課されることがあります。
実際に売却していなくても「売却したとみなされる」ため、納税資金に苦労するケースも少なくありません。


3. ケース別に見る複雑さ

  • ケース① 相続人が外国に居住している
    → 日本の自宅も米国の預金も、日本の相続税の課税対象に。

  • ケース② 被相続人が外国に居住している
    → いわゆる「10年ルール」により、国外財産に日本の相続税がかからないことも。

  • ケース③ 日本に居住していた外国人が亡くなった場合
    → 日本の財産は相続税課税の対象になるが、国外財産は対象外。

  • ケース④ 日本に住んだことのない外国人が亡くなった場合
    → 日本国内の財産に限定して課税。

どのケースでも「被相続人と相続人の国籍・居住歴」が大きく影響します。


4. 実務での大きな壁

  • 日本の相続登記に必要な戸籍制度は世界的には特殊であり、海外では出生証明書や宣誓供述書を組み合わせて証明する必要があります。

  • 預金や有価証券の相続も、海外居住者は日本で口座を持てないため、売却や代理受領など煩雑な手続きが伴います。

  • 国ごとの相続制度の違い(大陸法は遺留分、英米法は遺言の自由など)も争いの火種となります。


5. 未来を守るための備え

  • 生前の準備:遺言や信託を活用し、相続財産の分け方を明示する。

  • 税務対策:国外転出時課税や二重課税を避けるため、日米租税条約などを理解して活用する。

  • 専門家連携:日本の税理士・司法書士、海外の弁護士・税理士がチームを組むことが不可欠。


「国際相続は、家族の絆を守るための“国境を越えた準備”が必要です。」

国や制度の違いが複雑に絡み合う国際相続。トラブルを避けるためには、早めの準備と専門家の協力が欠かせません。家族の「ありがとう」を守るために、今から一歩を踏み出しましょう。

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